2015年11月15日

母と子の剣道日誌(58)武士道シックスティーンを読んで…私にとって剣道とは?(中篇)

母と子の剣道日誌(57)武士道シックスティーンを読んで…私にとって剣道とは?(前篇)」から続いています。

(小説のネタバレを含んでいますのでご注意ください!)

武士道シックスティーンの小説版では、なぜ剣道をやるのか、剣道で何を目指すのか?という問いかけが各所にあります。

幼い頃からずっと剣道一筋。剣道をやって勝つのが当たり前で、すべてを「勝ち負け」でしか見てこなかった香織。

ずっと日本舞踊を習ってきたが、家の事情でお金のかかる日本舞踊を続けられず、「似ている部分があるから」と中学で剣道部に入部した早苗。
もともと呑気なキャラクターで、剣道の雰囲気が好きでやっている早苗は「勝ちたい」という気持ちは薄いのですが、早苗が「勝ち負けにこだわりたくない」のは他にも理由があります。
早苗の父親が事業の研究の権利をめぐる裁判で負け、家出同然でいなくなってしまったからです。


最初から相手を「斬る」つもりで試合に挑み、時には反則技を使ってまで勝とうとする早苗。
中学時代は個人で全国2位になっています。

いっぽう、早苗は中学時代はこれといった戦績がありません。
日舞で鍛えた足腰の強さと、相手を見る目がある早苗は、全く殺気がないのに、強い人との試合の緊張感や技のやりとりが楽しくて、強い人には勝ってしまったりするのです。

中学最後の試合で、全然強そうに見えない早苗に見事に面を取られて負けてしまった早苗は、いったいなぜ自分が負けたのか…なぜ早苗は「強い相手にだけ」勝てるのか…そこにこだわり続けます。

香織は、自分が通ってきた厳しい道場とは違う、高校の部活の「ぬるい剣道」に嫌気がさしつつも、1年生ながらインターハイにも参加して団体戦で優勝を収めます。
が、それから香織は「なぜ、自分は剣道をやってきたのだろう」「ずっと勝ち続けて、どうするのだろう」という気持ちにとらわれ、剣道をやる気を失い、試合にも勝てなくなってしまいます。


迷いを持ったままの香織は、子供の頃からなじみの武道具屋の「たつじい」のところに行きます。
たつじいは、香織に「五輪書」(宮本武蔵が書いた剣術の指南書)を薦めて読ませた人で、香織はそれを座右の銘としていつも持ち歩き読んでいるのですが…

(以下、セリフは小説の引用そのままではなく、おおまかな要約をしながら書いています)

たつじいは、五輪書は
「剣術の指南書としては、心構えばかりで、具体的にどうしたらいいかが書いていない」
「武蔵が60の時に書いたということは、自分の人生を振り返って、昔はすごかった、俺はこんなすごい事をした、と書きたかった本ではないのか」
と言います。
五輪書を愛読している香織は
「五輪書を年寄りの自慢話みたいに言うのをやめてほしい、そもそもあたしがもっと強くなれるようにと私に薦めてくれたのではないのか」
と言いますが…

たつじいは、そこで香織から聞いていた、早苗の話をし出します。

「早苗ちゃんは、構えが良くなるとか、技ができるようになるとか、自分の成長こそ剣道をする目的だ、という子なんだよね」
「奴の理想論のほうが、あたしの勝負論より優れているとでも言いたいの」
「香織ちゃんの勝負論も、その子の自己成長重視型の姿勢も、大差ないと思うけどね。
勝ち負けに拘るってのは、要は相手に勝って喜ぶということ。相手より自分のほうがある時点では優れていた。そのことを確認して、安心するってことだろう。
つまり、比較の対象が他人というわけだ。
対して早苗ちゃんは、習った技ができるようになる、前よりも構えがよくなる。それは過去の自分を比較対象にしているってことじゃないか。
要は両方とも、今の自分と何かを比べて、その比較対象より優れていたらいい、劣っていたら駄目という判断をしていることになる。その点においては考え方は同じだ。
それを悪いと言っているわけではないが、それがすべてでは、大切なものを見失ってしまうんじゃないか

「なに、大切なことって」
「それを五輪書から読み取ってほしかったんだけどね」


たつじいは「五輪書から読み取ってほしかったこと」がなんだったかは言わないのですが…
後に香織が、早苗に向けて言っているのです。
「あたしはてっきり、武蔵は自分の創始した二天一流を、後世に残すために書いたんだとばっかり思ってた。でも、何回も読みかえしてみて、武蔵は剣術とか兵法が、好きで好きでしょうがなかったんだろうなって…そう感じるようになったんだ。
好きで始めたことなのに、それの何が好きだったのか、見失っちゃうことってあると思うんだよ。
でも、そういう時は確かめりゃいいんだよな。原点に帰るとか、そういうこと。そういうのは初めて実感したっていうか、再確認したっていうか」


私はここの部分を読んで、たつじいのセリフに対して「う〜ん、そうなのかな?」と考え込んでしまいました。
私が剣道をしている理由は「剣道が好きだから、やっていて楽しいから」なのですが、やりがいを感じるのは「自分が成長したと思えた時」なのです。それは、他人に勝てるようになる、ということを含めて、です。


私は香織とは違い「剣道の何が好きだったのか」を見失ったことはないのですが…
「自分が剣道をやる事に、意味があるのか」と考えた事は何度もあります。

だって、剣道が好きだったら、見ているだけだっていいわけで…
どんなにやってもたいしたレベルにはならないと思われる自分。
他の人に相手してもらうのも躊躇してしまうようなレベルのままだったら…
そう考えると、いくら好きでも…一生懸命やっているのに全然上達しなかったら、やはりやる気を継続していくのは難しいでしょう。

そもそもの私の目標は
「本当に戦える人になりたい」「カッコイイ女性になりたい」「逃げない人になりたい」
だったわけですが、「逃げない」はともかくとして、「カッコよく」なれるかどうかはいまだ微妙です。
やや鈍めで体力もあるとは言えない私は、何度も何度も反復練習をしないと、なかなか必要な動作が身に着いていかないからです。

となると、人と同じように上手くなる、というのはなかなか難しいわけで、技術的にも「自分なりの目標」を持っていないと、剣道を続けるモチベーションを見失ってしまいかねません。
私の場合は、剣道を始めた時期自体が遅いうえに、運動神経もさほどでないので、「人より強くなる」ことを目指しているわけではありません。
それだけに「過去の自分との比較」って大事な事だと思うんです。

年を取れば前より動けなくなるでしょうから、単に技術的なことだけの「比較」は意味がないと思いますが、努力をしているからこそ「できることが増える」わけです。
剣道を続けていくことで、体力や技術以外の「何か」が身について、動けなくても勝てるようになるかもしれません。
実際、ほとんど動かないのに、若い人に勝てる老剣士も多くいらっしゃいます。

私のように、技術的には「たいしたことない」人間は…
ただ「好き」なだけではなく、そういう、努力も技術も精神も、全体をひっくるめての「成長」を感じられてこそ、剣道を続ける気持ちを持ち続けられるのではないか、と思いました。
もちろん、根本に「剣道が好き」な気持ちがあるからこそ、それを「やりがいがある」と感じるのでしょうけれども。

まあ、小さい頃から剣道一筋の香織と、剣道が好きになって大人から始めた私とでは、たどった道も何も全然違うわけで…
そのあたりは小説に書かれていることとはちょっと違うかな〜、と思ったのですが、そこであらためて「自分はどうなのか」と考えられたのは収穫でした。


まだまだ長くなってしまったので、続きます〜。

posted by はなずきん at 15:08 | Comment(6) | 剣道小説、漫画、映画などの感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はなずきんさん

こんばんは〜
武士道シックスティーンって、私は映画しか見ていないのですが、これは、コミックや小説も読まないとですね。(小説は少しだけは読みましたね、そういえば)

だいたい、実写版を原作より面白くするのは難しいですよね〜

自分が剣道をする意味…ですか…
考えたこと、なかったですが…

そもそも、私は剣道やりたいなあとぼんやり思ってて、ママ友達に「私、剣道やりたいって思ってたんだけどさ〜」と世間話の中で言ったら、お家に帰って、ご主人(五段の先生です)にお話ししてくださったんですね。そしたら、その先生が、それはもう熱心に誘ってくださって。それで始めることが出来たというわけなんです。

私が剣道をしている意味…う〜ん。なんだろう?まずは、好きだから、面白いから、ですねえ。いまだに、稽古に行く前は、家で「今日は行かないにしようかな」と毎回ぐずぐず言っているんですが、帰り道は、非常に充実した気持ちになってます。

その精神性や奥の深さも魅力ですし、だいたいにして、道着や刀が好きですし。研ぎ澄まされた感じとかもですね。

とにかく、剣道と日舞は、やるべくして生まれてきたような気さえします。

と、言いつつ、今日気付いたことは二つあって。
一つ目は、私は今まで、自分の能力を高めることで人より勝つ経験はたくさん積んできましたが、人を負かして、自分が勝つというものに取り組んだのは、体育の授業以来初めてかもしれないということです。
二つ目は、私はとにかく、対人関係はいつも受け身であるということです。それが、剣道でもすごく出ているようで、「あなたは、相手が出てきたら、それに応じようとばかりしていますね。」と指摘されてしまいました。
上でも書きましたが、剣道を始めることになったのも、やはり受け身でしたからね〜あんな風に、何度も何度も足を運んで、誘ってくださらなかったら、始めていなかったかもしれないですし。

恋愛でも、いつも受け身でしたね〜そういえば。
自分から好きになったり、ましてや告白するとか、全くありませんでしたね〜
最近ちょっと、こじれている人がいるのですが、その人相手でも、やっぱり、相手はまだ怒ってるかな、とか、仲直りするつもりあるのかなとか、相手の出方ばかり見ています、そういえば。

稽古の時も、この受け身のムードが出ているからか、私からお願いします、と言って稽古していただくのでなくて、見てあげると言って下さる先生に見て頂いているばかりでした。

剣道って、その人の生き様が出るんですね〜

ちなみに、昨日の新しい竹刀、なかなかいいです。ただ、長いので、腕に負担が結構ありますが(^_^;)

Posted by 麻子 at 2015年11月15日 21:25
追伸

はなずきんさんが、『努力も技術も精神も、全体をひっくるめての「成長」を目指されていること』こそが、もうすでに『かっこいい女性』になっている証なのではないでしょうか(*^_^*)
Posted by 麻子 at 2015年11月15日 21:34
麻子さん

私みたいに、たいしたレベルでもないくせに、ごちゃごちゃ考えて剣道をしている人、あんまりいないと思います(笑)

そもそも、私は始める時からして「本来、大人は教われない場所」だったので、そこを押してやるからには「剣道をやる意味」というのは、考えざるを得なかったのです。
好きで始めたのに、全然できてない、と言われてばかりいたので、なおさらですね。

麻子さんは受け身でも「やるべくして生まれてきた」と思えるのですねえ…。
私にとっては「私の人生の中で最大のチャレンジ」なんですけれども。

私は麻子さんとは逆に、受け身である事のほうが少なかったです。
恋愛でも、好きになるとつい自分から言ってしまうほうでして(笑)。確かに、生き様が剣道とつながっているのかもしれませんね。

でも、まだ全然カッコよくないですよ〜。
少なくとも、私が私を見たとして「あの人カッコイイ〜」って思えないです(^_^.)
下手なわりにがんばってるなあ、とは思うでしょうけど(笑)まだまだ、ですねえ。



竹刀、使い心地が良かったのですね!
確かに長いと、最初はキツイかもしれません。私も昨年は39なんて全然振れませんでしたから。素振りをいっぱいして、筋肉をつけましょう!(笑)
Posted by はなずきん at 2015年11月15日 23:00
はなずきんさん

>ごちゃごちゃ考えて剣道をしている人、あんまりいないと思います(笑)

いえいえ、ここに、もうひとりいます笑

教わらずにやる剣道…想像を絶しますね。口伝のような要素が多いのに…移られて正解ですね。

私、物事に対しては受け身じゃないんですよ。ただ、対人関係には受け身なのです。だから、もし剣道が『独学』で家でも出来るものなら、多分とっくの前から始めていたと思います。剣友会のようなところに入っていく勇気がなかっただけでして (^_^;)

>少なくとも、私が私を見たとして「あの人カッコイイ〜」って思えないです

と思うでしょ?ところが、人から見るとそうでもないみたいですよ。
昨日、私、一緒に一級を受ける男の人と対戦して、私としてはけちょんけちょんにやられてカッコわる〜と落ち込んでましたが、見学しているママさんから、「構えとかカッコよかったし、大きな男の人相手に頑張ってたよ〜」と言われましたし、先生方には「よく防いでいると思って見てました。実は、一本も取られていなかったよ」と仰ってもらえました。ただ「構えや動きは、そんなにおかしくない」レベルみたいでしたが…

あと、他の先生には「相面になった時に、相手に面を取られたと思っても、態度は、私が一本とったのよ〜という堂々としたものであったほうがいいですよ」とも言われました。

というわけで、きっとはなずきんさんをカッコいいと見ている人はたくさんいると思いますよ。

筋肉…そうですね〜と思って、まずは速筋を、と、軽めの竹刀で一分間早素振りをしました。死ぬかと思いました…
Posted by 麻子 at 2015年11月16日 16:42
麻子さん

今までいろいろな事にチャレンジされていた、という事なので、物事に対しては受け身ではないのですね。
でも対人関係は受け身なのは、他人に対する気遣いが細かいってことかもしれませんね。

私は他人にどう見られてもいい、って開き直ってるところがあるので(笑)気遣いも大まかな気がします…、


>と思うでしょ?ところが、人から見るとそうでもないみたいですよ。

そうなんですかねえ…、経験者でない人から見るとそうなのかもしれませんが…。
そういえばこの間、いつもと違う稽古場所の武道館で稽古した時、たまたま隣でやっていた柔道の教室にママ友さんがいまして。
挨拶しにいったら「はなずきんさんの袴姿、カッコイイわー」って言われました。
剣道をやって袴をはいているだけでも、カッコイイと思ってもらえるんだから、そういう意味ではそうなのかもしれませんが(笑)

>一分間早素振り

私も一分はできないと思います…ってあれ、ふだんはどのくらいやってるんだろう…?
日曜日の稽古だと早素振り50回やらされて死んでます(^_^.)
30回くらいがきちんとできる限度ですねえ〜。
Posted by はなずきん at 2015年11月16日 23:16
麻子さん

今までいろいろな事にチャレンジされていた、という事なので、物事に対しては受け身ではないのですね。
でも対人関係は受け身なのは、他人に対する気遣いが細かいってことかもしれませんね。

私は他人にどう見られてもいい、って開き直ってるところがあるので(笑)気遣いも大まかな気がします…、


>と思うでしょ?ところが、人から見るとそうでもないみたいですよ。

そうなんですかねえ…、経験者でない人から見るとそうなのかもしれませんが…。
そういえばこの間、いつもと違う稽古場所の武道館で稽古した時、たまたま隣でやっていた柔道の教室にママ友さんがいまして。
挨拶しにいったら「はなずきんさんの袴姿、カッコイイわー」って言われました。
剣道をやって袴をはいているだけでも、カッコイイと思ってもらえるんだから、そういう意味ではそうなのかもしれませんが(笑)

>一分間早素振り

私も一分はできないと思います…ってあれ、ふだんはどのくらいやってるんだろう…?
日曜日の稽古だと早素振り50回やらされて死にそうになってます(^_^.)
30回くらいがきちんとできる限度ですねえ〜。
Posted by はなずきん at 2015年11月16日 23:41
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