2015年11月14日

母と子の剣道日誌(57)武士道シックスティーンを読んで…私にとって剣道とは?(前篇)

最近、剣道を題材にした「武士道シックスティーン」という小説を読んだので、今日はそのお話です。
作者は『ジウ』や『ストロベリーナイト』を書いた誉田哲也氏です。
私は小説発表当時は全然知りませんでしたが、人気があったようで、続編も出ていますし、映画と漫画にもなっています。

(以降、映画版、漫画版、小説版とも話のネタバレもあるかもしれません。
これから読みたい方はご注意ください)

3年ほど前の事ですが…子供が警察で剣道を習い始めた当初、何か剣道モノの漫画を読ませてやる気にさせよう…と考えて、剣道を題材にしている漫画を探した事があります。その時に「武士道シックスティーン」の漫画版を購入しました。
漫画版は少女系の「尾崎あきら版」、少年系の「安藤慈朗版」の2種類があるのですが、うちの子の趣味を考えて少年系のほうを購入しました。


小説版、映画版、漫画版に共通する部分を拾ってあらすじを書きますと…

小さい頃から「勝つこと」にこだわって剣道一筋、全国の中学の大会で2位の少女「香織」は、中学最後の大会で無名の選手の「早苗」に負けてしまいます。
なぜ負けたのかもわからない、という悔しさから離れられない香織は、早苗とふたたび対戦するべく、早苗が進学する高校に入学し、剣道部に入ります。

早苗は「勝ち負け」にこだわらず、雰囲気が好きだからと剣道をやっているのです。強くなりたいという気持ちも薄いのに、強い人には勝ったり、さして強くない人には負けたり…というのを見て、早苗は「自分を負かせたのはこんな人物なのか」と納得がいきません。

部活の剣道が生ぬるいと感じる香織と、部活でこそ剣道をやりたいという早苗。
ふたりは近づいたり、相反したりしながらも、少しずつ相手をわかりあい、自分を見つめ直し、成長していきます。


漫画、小説、映画に共通するあらすじはだいたいこんな感じでしょうか。

漫画版のほうは、けっこういい出来だと思います。
読むたびに、剣道に対してのやる気を上げてくれる良書です。
基本的には青春ものだからなのか、「剣道興味なし」と言っている長男もけっこう読んでいるのですが、剣道をやっている人でなくても、面白い話なのではないかなと思います。
肝心の次男には、どこまでヒットしているのかわかりませんけれども(笑)


漫画がけっこう良かったので、先日、テレビで映画版を放送していたのを録画して見たのですが…
これは正直「う〜ん、少なくとも漫画はこんな話じゃなかったよね?」と思うような出来でして…。漫画と全く同じでなくても別にいいのですが、ストーリーそのものが筋が通ってないし、主人公キャラもなんだかイメージが違うし…。
けっこう話の重要な部分である「早苗がなんで香織に勝てたのか」という理由が映画でははっきりと描かれていないので、なんとも納得のいかない感じなんです。

そしてわざわざ映像にしているにも関わらず、肝心の剣道シーンがイマイチな部分が多かったのです。
早苗は足さばきがいい、って香織が言っているのですが、経験者から見ると全然そうは見えません。ただちょこまか落ち着きなく動いているだけなので、あれは「足さばきがいい」とは言いませんね。
小説や漫画版では重要なファクターである「早苗が日舞をやっていた」という設定は映画では全く出て来ないため、「なぜ剣道経験の少ない早苗が強い香織に勝てたのか」が説明できていないのです。

そして話の流れを決めるような、主人公が「見事な面を打って一本取った」というシーンが、全然一本入っていないじゃん、というのが2回もあって…。
早苗が初めて香織に勝った試合がまずそうなんです。物語の一番重要なシーンが決まってなくてどうしろというのでしょう。
早苗は相手の正面を打ってはいるのですが、思い切り香織の面の面金(顔の前の金具部分)を打ってるんです。面は本来は「頭頂部」を打たないといけないので、高校生の試合で、あれは絶対一本にならないと断言できます。

剣道素人の役者さんだからばっちりとできないのは仕方ありませんが、映画ならいくらでも編集できるわけですから、せめて肝心の部分は上手い人に演技させてそれらしく差し替えてくれればいいのに…と私は思いました。

映画に拾える部分が全くなかったわけではありませんが、
正直、主人公ふたりの役者さんのプロモーションビデオ?と感じるような作品でした。



が…私は映画と漫画の原作である小説版を読んだことがありません。
漫画版のほうは全体の流れは納得できるものでしたが、映画も小説版がベースなはずなので…だから、小説のほうはいったいどうなのかな?と思い、小説版も購入したというわけです。


小説は文春文庫から出ていますが、大人向けというよりはやはりティーン向け、でしょうか。
香織と早苗がそれぞれ自分の立場から考えや出来事を語る、という形式で書かれているので、ティーンの言葉で書かれていて…なんとなく読んでいてこそばゆい感じはあります。

でも、内容的には、作者は剣道のことをしっかり分かって書いているな、という気がしました。
作者自身も子供の頃に剣道経験があり、自分の子供にも習わせているそうで、経験者が読んでも納得できるような描写です。
香織のキャラはちょっと「やりすぎ」感はないでもないですが、キャラとしては立っているし、ふたりのからみ方も悪くないと思います。
でも、漫画版よりは原作のほうが、主人公ふたりの間に距離感があるような印象でした。

漫画版で私が大好きな「村浜部長」が、小説ではあまり描かれていないのがちょっと残念ですが…
村浜部長は小説版でもそれなりに重要な役どころではあるのですが、漫画版のほうがキャラがしっかり生きている感じがします。

全体的には面白かったと思います。
ストーリー全体の流れは、漫画版とちょっと違う部分があるのですが、小説版のほうがエピソードも充実していて説得力がある感じでした。
読み終わって、続きが読みたいなあ、と思いました。

そして思ったのは…、映画はやっぱり、肝心の部分が描けてないんだなあ、ということでした。
漫画版と小説版はほぼ同じ線上にあるのですが、映画は全然別物、といった印象です。
おおまかな設定は同じものの、主人公ふたりのキャラが全然違うし、剣道がからんだ部分の説得力、というのは映画には感じられないので。
「ふたりの青春もの」というか「友情」というか…、まあ、そこが主軸の映画ですよね。


小説の内容についての詳しい感想は、私自身の剣道感ともからんできて長くなるので、次回に続きます。
タグ:剣道
posted by はなずきん at 20:48 | Comment(0) | 剣道小説、漫画、映画などの感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: